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ゼレンスキー氏の「自撮り動画」がウクライナの対ロシアPR戦勝利に貢献している理由

ロシアの侵攻が続くウクライナ情勢は、未だ解決の道筋を探り、周辺国家を巻き込むように緊張関係が続いています。

今回の記事では、豪メディア”The Conversation”に寄稿された”Why Zelenskyy’s ‘selfie videos’ are helping Ukraine win the PR war against Russia“の原文を日本語訳し、その内容をご紹介します。

■この記事について

  • 読了目安:5分
  • ページ数:1ページ

■本記事のサマリー

  • ゼレンスキー大統領のメッセージ戦略の3つの特徴
  • SNS活用がグローバルな連帯を生むきっかけとなった
  • 現代の情報戦を勝ち抜くルール

「まるでアクション映画のようだ。首都が戦場と化す中、ロシアに反抗する大統領はカメラに向かい、はっきりと説得力のあるメッセージを残している。私はここにいる。私はここにいる。我々はいかなる武器も捨てない。」

2022年2月25日、ウクライナの大統領で元芸人である、ヴォロディミル・ゼレンスキーは、ロシアの侵攻に反対する国際世論を動員するために、自撮り風のビデオを、自身のソーシャルメディアに投稿しました。1時間で300万回再生され、世界中で注目を大きく集めています。

芸人から政治家に転身した彼は、ヨーロッパの指導者たちから、ウクライナに直接武器を送るよう依頼するなど、そのわずか1週間前には考えもしなかった行動を納得させる声明を行なっていると評価されています。

しかし、iPhoneで作成され、Facebook、Telegram、Twitterなどのソーシャルメディアサイトに投稿されたゼレンスキー氏のビデオは、世界中にウクライナと反ロシアの世論を結集させる上で、なぜこれほど説得力があったのでしょうか?

デジタル・ソーシャルメディア・プラットフォームの専門家であるスサラ氏は、ゼレンスキー氏の動画がウクライナ戦争を一瞬にして、多くの人々の心に深く刻み込んだ理由が3つあると推測します。特に、2月25日と2月26日に投稿された動画は、最も注目を集めたと総括しています。

| 2月25日のゼレンスキー氏の動画

信頼できるメッセージ

第1の理由は、メッセージの信憑性です。

2月25日、金曜日の深夜にキエフで撮影された映像には、街灯の前に立つゼレンスキー大統領と閣僚が、テレプロンプターや公式な道具を一切使わずに、カメラに向かって直接話している様子が映っています。ゼレンスキーの後ろに立つウクライナのデニス・シュミハル首相は、携帯電話のタイムスタンプを表示し、撮影された瞬間を強調する場面もありました。

自撮り動画を作ったり、家族でビデオチャットに参加したりすることが当たり前の時代に、「私たちはここにいる、兵士たちはここにいる、国民はここにいる」というメッセージの恐るべき緊迫感とは裏腹に、そのありふれた光景が、彼の訴えの信憑性を際立たせています。

バラク・オバマもドナルド・トランプも、大統領になり彼らの信奉者を鼓舞するために使った戦術のひとつに、「見かけの信憑性を伝える」という手法があります。

Instagramで1,350万人のフォロワーを持つゼレンスキー氏は、この同じスキルを使って、世界の大半の人々をウクライナの味方として集結させることができたのです。

視聴者とつながること

彼の動画が効果的だった第2の理由は、ソーシャルメディア上で視聴者とつながっていたことがあげられます。

ソーシャルメディアは、ユーザーがコンテンツに個人的なつながりを感じることで、メッセージの可視性を増幅させ、同じ考えを持つ人々と共有することで、本質的に彼らをオピニオンメーカーに変化させられるのです。

企業が新製品などをアピールするためにソーシャルメディアにメッセージを投稿するのは、まさにこの効果を狙ってのことなのです。私の調査によると、企業がソーシャルメディアに投稿したブランドメッセージは、ユーザーが自分のソーシャルメディアに投稿することで、より大きな力を持ち、消費者に影響を与える可能性が高いことが分かっています。

例えば、スターバックスは、人魚の海上ロゴをクールだと思わせることで、若い「インフルエンサー」たちに画像を再投稿させることに成功しています。

ゼレンスキーは、自国民の団結力や連帯感を強調したメッセージで、彼の動画を見た多くの人々との接点を生み出しました。そして、説得力のある直接的なメッセージで、ソーシャルメディア上のさまざまな海外のオーディエンスに投稿を訴え、紛争を当事者化したのです。

メッセージの即時性

これらの動画が説得力を持つ第3の理由は、彼のメッセージの即時性です。

自国にミサイルや爆弾が降り注ぐ中、国民のために援助を求めるゼレンスキーの訴えは、これ以上ないほどの緊急性を持っていました。そのため、何百万人ものユーザーが、ロシアの侵略を撃退するために国際的な圧力を高めるという彼の大義に即座に賛同するようになったのです。

「私は弾薬が必要なのであって、車が必要なのではない」と、ゼレンスキーは国外への移送を申し出たアメリカ政府関係者に主張したと言います。

調査によると、緊急性が高いと思われるメッセージは感情的な反応を促しやすく、その投稿を投稿したり共有したりする人の数が増えるそうです。このような会話の連鎖が「トレンド」となり、ユーザー間の議論が活発化するため、メッセージがさらに注目されるようになる傾向があります。

このように、災害支援のための募金活動を行うデジタル・アクティビストは、ソーシャルメディア・ユーザーを巻き込み、被災者への支援を迅速に行うことを目的としています。

わずか数日で、ハッシュタグ#standwithukraineが流行し、資金援助が殺到し始めました。それにより、ウクライナはこれまでに2200万米ドル(約26億5000万円相当)の暗号通貨による寄付を集めました。

ソーシャルメディアのプラットフォームは、リーチとエンゲージメントがすべてです。

ゼレンスキー氏が投稿した緊急メッセージは、ウクライナの人々を支援するための募金活動や慈善活動の詳細を共有し、自分たちのコミットメントを伝えるオンラインユーザー集結というグローバルな同胞を生み出すことに役立ったのです。

戦争の英雄となったごく普通の人

ソーシャルメディアのプラットフォームは、人々が世界をどのように理解し、ニュースが展開されたときにどのように反応するか等、分析するのに役立ちます。

ゼレンスキー氏は、ソーシャルメディア上のルールを直感的に理解しているように見えますが、それは彼が以前エンターテイナーとしてのキャリアを持っていたことを考慮すれば納得がいきます。

彼のビデオは4分から7分と要点がまとめられており、とても親しみやすい印象を抱きます。ウクライナ版『Dancing with the Stars』に出演したり、『パディントン』の声を担当したりした彼の古いビデオがここ数日、再浮上して流行しており、非常に危険な対立の中で彼の信頼性、好感度、正常性が強化されています。

その結果、彼のメッセージは世論を喚起する上で極めて強力なものとなっているのでしょう。

Published: March 1, 2022 10.41pm GMT

翻訳:Lacreta


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